死に神と呼ばれている俺と。

2/13
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 いつもの嫌な夢で目が覚めた。  顔の見えないそれは、誰なのか、何なのか、俺にはさっぱりわからない。  俺にはわからないのに、それは何でもわかったような口調で俺を責める。  残念ながら、俺には心当たりしかなかった。  その言葉を否定するだけの事実なんて、何一つ残ってなんかいやしない。  昔から俺は、人間だけでなく、生き物という生き物と縁の薄かった。  俺を産んだ母親は、お産時に想定外の出血で亡くなった、そう聞いている。今となっては医療事故だったんじゃないかとも思うのだが、当時の親父は、突然妻を失った悲しみと、託されてしまった子どもたちとどう生きていくのかで頭がいっぱいだったようで、本当のところは曖昧なままだ。  子どもたち……そう、俺には三つ上の兄貴がいた。残念ながら、過去形だ。俺が保育園に、兄貴は小学一年生であった。祖父母が用意してくれた黒い傷一つ無いランドセルが、とても輝いて見えて羨ましかった。祖父母の家に預けられていた俺と違って、兄貴は学童保育で過ごすことになった。暴れ盛りの男児二人を預けることを親父が遠慮してのことだった。小学生だったし、友人も増えて良いだろうという考えもあっただろう 。俺も三年後には兄貴と一緒に小学校に通うのだと、信じて疑わなかった。まさか二学期がはじまって早々に、段ボール箱にばらばらにされた状態で無言の帰宅をするなんて想像できるはずも無い。兄貴は学校からの帰り、何者かに連れ去られるのを目撃されていた。その二日後だった、段ボール箱が我が家の玄関前に静かに置かれたのは。この大胆なやり口であったにも関わらず、事件は未だ解決していない。時間が経過しすぎた、犯人逮捕は無理だろうなと、俺は感じている。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!