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なんとか逃れようともがきながら顔を背ける亀井の態度に腹が立ち、ぎりと腕を締め上げる。
「まだすっとぼける気か? 昨日、お前は俺に『マサキだ』と名乗ったよな? 何故嘘をついたんだ?」
「別に嘘じゃありません! 僕はマサキです。雅(みやび)に風紀の紀で、雅紀。亀井雅紀です」
「……はぁ?」
ちょっと頭の中を整理してみた。そういわれて見れば真崎も雅紀もどちらもローマ字にしてしまえば同じマサキ。イントネーションも同じだ。それにしても。
「あのな、下の名前の表札かけとくヤツなんてどこにいるんだ……」
「そんなの僕の勝手じゃないですか。表札は前に住んでいた人が残していったものだけどたまたま同じ名前だったし、デザインが気に入ったからからそのままにしてるだけです」
呆れながらも目を眇め本心を探るように睨み付ける長瀬に、亀井は気まずそうに目をそらした。
「じゃあ、同じ職場にいるのはどうしてだ?」
「それは、僕だって驚いたんです! 単なる偶然です!」
確かに先ほど長瀬と再会した時、亀井は驚きの声をあげていた。あれが演技だとも思えない。
――とすると、本当にただの偶然なのか?
頭の中でいろいろな考えを巡らせる長瀬に、おそるおそると言った感じで亀井が声をかける。
「あの、もういいですか?」
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