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あれから五年も経っている。引っ越している可能性が高い、とあまり期待はしていなかったが、ダメ元で来てみて正解だった。
ただ残念な事に、どうやら怜司は不在らしい。通路に面した窓は明かりが消えていて人の気配が感じられない。試しに呼び鈴も押してみたが、やはり反応はなかった。
とりあえず、今日のところは連絡先を書いた名刺だけでも残していこうと、コートの内ポケットを探った。だが、そこには名刺入れはおろか、筆記具の類さえ入っていない。全てホテルに置いてきてしまったのだと気づき、長瀬は自分の準備の悪さに舌打ちした。
「くそっ、こんな時に限って……」
近くのコンビニまで戻り筆記具を用意するか。いや、メモは残さずこのまま帰っても構わない。ここに怜司がいることはわかったのだし、どうせもう一度訪ねてくることになるのだ。知らせずにおいて、驚かせてやるのもいいかもしれない。そんな風に思案をめぐらせている間に、コツコツと階段を上り近づいてくる足音があった。
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