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「いや。まぁ、たまたま家も知ってたし、放っておくわけにもいかないからな」
タクシーを待たせてホテルに帰ることもできたのに、好奇心に負けてつい部屋に上がりこんでしまった手前、礼を言われると少し心苦しい。
亀井はベッドの上でもぞもぞと居住まいを正し、ぎゅっと布団を握り締めた。
「あの、僕、何か変なこと口走ったりしてませんでしたか……?」
「変な事?」
「僕、お酒に酔っても顔や態度には全然でないんですけど、突然ワケわかんないことを口走ったと思ったらそのままぱったりと寝てしまうらしいんです。だから昨日は飲み過ぎないように気をつけてたのに……」
心底後悔しているという感じで亀井は頭を抱えた。そういえば、と長瀬は昨晩の亀井のフニャリとした笑顔を思い出した。なにやら、六リットルがどうとかイチゴ味がどうとか意味不明な事を呟いていた。ふいに、以前にもそんな人物がいたような、そんな話を聞いたことがあるような不確かな記憶が甦った。
「……そういう体質のヤツって意外と多いのか?」
「え?」
恐る恐ると言う感じで顔をあげた亀井の不安そうな様子に、つい悪戯心がうずいた。
「変な寝言、言ってたぞ」
「うそっ」
「好きだー愛してるー、とか。俺を誰かと間違えてたのか?」
「え」
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