第四章

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 今日一日の仕事の流れを説明してそれぞれに作業を指示し、質疑応答を終え仕事にとりかかる。ほどなくしてかたかたとキーボードを叩く音が耳に心地よく響き、うまく仕事に集中できているのがわかった。長瀬もそんな四人の様子を見ながら、パソコンに向かい仕様書を作成したり、業者との打ち合わせをこなし午前中は慌しく過ぎていった。  チャイムが昼の休憩を知らせる。にこにこと笑いながら安藤が長瀬のデスクに近づいてきた。隣には小泉を従えている。 「長瀬係長、よかったら昼飯ご一緒しませんか。美味しい店案内しますよ」 「えぇ、ぜひお願いします」  昨日の昼は部長に誘われて、少し高級な寿司のお相伴に預かったが今日は特に予定はなかった。プロジェクト内の親交を深めるために行っておいて損はないだろう。  恩田は女子同士でかたまってロッカー室で弁当を囲むらしく、さっさと席を離れていった。亀井も安藤に声を掛けられていたがすまなさそうに 「あ、僕、今日はあんまり食欲ないのでコンビニでサンドイッチか何か買って軽く済ませますから、みなさんお先にどうぞ」  と、再びモニタに視線を戻した。  結局、安藤と小泉と三人で連れ立ってオフィスビルから出て、安藤が勧める店に向かった。そこはこの街独特のとろみのあるスパイシーなトマトソースのスパゲティの専門店だった。     
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