第四章

7/13

504人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
 注文を終えると早速安藤が、「いやぁ、あのあと大変だったんですよ」と昨晩の二次会の話を始めた。恩田が意外にも酒に強く小泉を下僕のように扱っていただとか、小泉も意外とM気質でそれに嬉々として従っていただとか。小泉も負けじと、安藤がどんどん服を脱ぎはじめたので止めさせるのに苦労したのだという話を暴露した。二人はどうやらすっかり仲良くなったらしかった。  当然の流れで話は亀井の事に及んだ。昨日はセーブして飲んでいたようだが、亀井のいた部署の人間の話では酔うと面白いことを口走るらしい、と。 「へぇ、亀井って普段は大人しいからどんな事言うのか聞いてみたいなぁ」  小泉が運ばれてきたスパゲティを頬張りながら興味津々な顔をしている。 「そういえば、長瀬係長は昨日カメちゃんと一緒に帰ったんじゃないですか?」  安藤に話をふられて、長瀬はぎくりとした。確かに妙な事を口走ってはいたが、なんとなく他人に話して聞かせる気にはなれなかった。それに、その後酔っぱらって眠り込んだ亀井を家まで送り届けそのまま自分も泊まったなどという事も言わないほうがいいだろう。 「えぇ、まぁ」  長瀬は曖昧に頷いて、「このスパゲティ、なかなか旨いですね」と話をそらした。  午後も順調に仕事は進んでいた。この調子でいけば、十日の期間内に無理なくノルマが達成できそうだ。 「恩田さん」  長瀬はパソコンに向かいキーボードを叩いている恩田に紙袋を差し出した。 「これ、今打ち合わせしてた業者さんにもらったんだけど、三時に配ってくれないかな」     
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

504人が本棚に入れています
本棚に追加