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「つか、恩田さぁん。長瀬係長がスイーツなんか食べる訳ないじゃないっすか」
小泉がむしゃむしゃと菓子を頬張りながら、軽い調子で話している。
「まぁ、たしかに係長みたいなイケメンが菓子むさぼり食う図は想像できんな」
「あ、安藤さんひでぇ。それじゃ俺がイケメンじゃないって言ってるみたいっすよ」
笑い声を上げる三人を横目に、長瀬は次の仕事の依頼をしようと「亀井」と声を掛けた。
亀井は恩田から渡された菓子を大人しく食べていたが、長瀬の声に肩をびくりと震わせてから「は、はい」と慌てて立ち上がった。
「なんでしょうか」
「今の作業が終わったら、次はこれをやってほしいんだが」
言いながら数枚の書類を差し出した。すると、受け取ろうとした亀井の指先が少し長瀬の手に触れた。途端に、亀井はびくっと手をひっこめて、書類が音を立てて床に散らばってしまった。
「す、すみません!」
「いや、気にするな」
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