第二章

1/9
500人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ

第二章

 翌朝、モーニングコールで目を覚ました長瀬はシャワーを浴び、念入りに髭をあたり髪を整えた。今日は新しい仕事に就く初日。気合を入れたい日には丁寧にグルーミングをするのが長瀬のこだわりだ。一番気に入っているブランド物のスーツに身を包み鏡の前で最終チェックを行ってから、ホテル一階のカフェラウンジに向かう。そこでコーヒーとトースト、サラダという簡単な朝食を済ませると、今日から十日間の仕事場となる支店を目指した。  支店は駅前のホテルから徒歩で十分ほどの距離にあるオフィスビルのワンフロアを借りきっている。本社は七階建ての自社ビルなので、それに比べると規模はかなり小さい。  エレベーターを降り、無人の受付で呼び鈴を押すと衝立の向こうから女性社員が煩わしそうに現れた。まだ朝の慌しい時間帯なので面倒だったのだろう。しかし、長瀬の姿を見ると途端に目を見開き頬を染め、態度を改めた。いつもの事なので特に気にかけるでもなく、長瀬は自分の名前と用件を告げた。女性社員はすぐに内線電話で確認をとり、直属の上司となるクロスメディア事業部の部長、中川の元へと案内してくれた。 「失礼します」     
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!