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第三章
長瀬が席に戻ると、既に亀井は何事もなかったかのように済ました顔でパソコンに向かいキーボードを軽やかに叩いていた。ちらりとモニタに目を走らせながら後ろを通り過ぎようとすると、すぐ横の安藤に呼び止められた。
「長瀬係長、ちょっといいですか?」
「あ、あぁ。はい」
デスクの上には見覚えのある資料が広げられている。長瀬が本社にいる時にまとめたデジタルサイネージに関する資料だ。
本店にいる時に作成した資料やマニュアル、システムの仕様書などは今回のメンバーにもあらかじめ配布されている。ITについてそれなりに基礎知識があれば理解できるものだ。あとは十日間のうちに、それをいかにして各々が自分のものとして取り込みしっかりとした形にしてくれるか、それが長瀬にとっての課題でもある。
投げかけられた技術的な質問に、資料の参考箇所などを指し示しながら丁寧に答えると、安藤はすぐに「なるほどー」としきりに感心したように頷いた。
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