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忘れたくないあたたかい記憶。でも、もう二度とあの場所には戻れない。 僕が中学生の時、両親が離婚した。四人で暮らしていた大きな家は売り払
い、僕は父親と小さなアパートに引っ越した。当時小学生だった弟は母親に連れられて、遠くに引っ越した。そうして、家族はバラバラになった。一緒に暮らしていた父親もいつしか家に帰ってこなくなった。弟と母親にも連絡を取らなくなっていた。
高校卒業後、生活するために必死で働いて、徐々に疲れ果て、自分以外の大切な人を気遣うような心を、家族を繋ぎとめておこうとする気力を失っていった。
年の終わりが近づいて、ふっと自分が何のために頑張っているのか分からなくなった。すると、急に張っていた線が切れたように体に力が入らなくなった。毎朝目を覚ました後、布団から出られなくなり、仕事に行くことがままならなくなった。そうして今日、退職届を出した。
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