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ぐらりと視界が歪んだ。目を開けるとただ何もない空き地が広がっていた。街中にいた時は夕方だったのに、もう真っ暗になっている。霧はいつの間にか晴れていて、以前住んでいた所であること、またそれが今は何もない空間であることをより浮き彫りにさせた。胸に穴があいたようで、その場に立ち尽くした。
「サンタさん」
子供の声がして、横を見ると十歳くらいの男の子が立っていた。その声で僕は、自分がまだサンタの格好をしていることに気が付いた。何故かリボンがかかった包みも二つ持っている。
「サンタさん、僕にプレゼント持ってきてくれたの?ちょうだい」
二つ持っているプレゼントの中の一つを渡して、男の子に尋ねた。
「どこから来たの?もう遅いよ。お父さんとお母さんは?」
男の子はすぐ近くの家を指差した。そして、お父さんもお母さんも仕事でまだ帰ってこない、と言った。それから、「プレゼント、開けていい?」と聞きながら、僕の返事を待たずに包みを開けようとする。僕ね、サンタさん探しに来たの、出会えてラッキーだったね、と包みをカサカサ開きながら言った。中にはブロックのおもちゃが入っていた。男の子がぱっと目を輝かせたのが分かった。同時に強い光が僕たちを照らした。
「悠斗。いた。やっと見つけた」
声の方を向くと、制服を着た少年が携帯のライトをこちらに向けて立っていた。悠斗と呼ばれた男の子が、かずやくん、と言って走り寄る。
「悠斗、何やってんだ。お母さん心配してるぞ」
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