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「かずやくん、サンタさんいたよ、僕にプレゼント持ってきてくれたの」
少年が怒っているのを全く気にしない様子で、楽しそうに話す。少年はサンタさん?と怪訝そうに言いながら、僕の方を見た。すると一瞬で目を丸くした。
「お兄ちゃん」
昔、弟が僕を呼んでいた呼び方で、目の前の少年が僕を呼んでいる。声が低くなって、背が伸びて、記憶の中の弟とは別人に見えたが、確かに顔に弟の面影があった。
「お兄ちゃん、何やってんの。こんなところでこんな格好で」
「そっちこそ」
なんでここに、と言う途中で悠斗が声を出す。
「かずやくんはね、よくここに来てるんだよ」
そういって、空き地を指差す。
「ぼくの家近くなんだ。かずやくん、いつもひとりぼっちでさびしそうだから、遊んであげてるの」
「ばか。いつも一人なのはお前だろ。俺が遊んであげてるの」
悠斗の頭をわしゃわしゃする。まるで遊んでもらっているように、きゃーとはしゃいぐ。かずやが少し気まずそうに僕を見た。
「かずやくん、サンタさんの弟だったの?」
サンタを信じている悠斗の前で何も言えないのか、困ったようにはにかんだ。
「すごいんだね」
悠斗はそう言って、満面の笑顔で僕を見た。
「サンタさん、プレゼントありがとう」
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