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がさりと二つの草むらが動く。
「出てらっしゃい。誰に頼まれたのか知らないけれど―――…」
「危ない!!」
少し右に離れた第三の草むらが飛び掛かるのを忠興が従者を庇う事で防ぎ、状況を見ていた最初の従者が忠興の更に前に出て草むらから現れた“刺客”の攻撃を牽制した。
「松井さん!」
「ずーっと見てたって訳か。言え。何故あの娘を狙った」
逃がさぬ様にと刺客を押し倒しながら、覆面へ手を伸ばす。呪詛を施行した者ではない事を目配せで報せると艶やかな従者は忠興へ娘の方を守るよう頼み二つの草むらを追い始めた。実行犯を残して逃げ始めたところを見るとどうやら雇われ者か、この辺りを闊歩する賊であろうか。
「大丈夫ですかっ?!」
駆け付けた忠興が尋ねるも娘は足首を締め付ける呪詛にまだ呻いている。靄だったものが少しずつ形を成していくのが見えた。
「…蛇…?!」
頭と尻尾は土に埋まったまま、枷のように地面へ潜っていく。黒い蛇の鱗が不気味に艶めいて娘の足首へ食い込んでいくので、忠興は其れを掴んで引き千切った。ぶつりと嫌な音を立てて体内から飛び出したかと思った血が一気に纏まり、膨れ上がって人の形に成った。恐ろしい形相の女人である。
「ウワーーーーッ!!!!」
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