春の中

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この国は。 明るい光にあふれ、今日もうららか。 山は霞に青く(けぶ)り、野は花ざかり。 そよそよと、風が奏でる音楽に乗り、少女たちの笑い声が聞こえます。 「そのお召物(めしもの)、素敵ねぇ」 「そうでしょう? この春一番の流行(はや)りですのよ」 「さっそくのお披露目という訳ですね」 華やかに着飾った彼女たちを見下ろしているのは、気だるい空気をまとった桜の花たち。 ほんのりと紅の差した、少女たちの頬よりも淡い色をした雲となり、高く高くそびえています。 さらさらと流れる小川が映した水浅葱(みずあさぎ)は、空の色。 (うま)れた光が、そよ風の奏でる音楽に合わせ、くるくると踊ります。 春たけなわ、昼下がりの事でした。
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