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「川向こうで、火事が起こったのでございましょう」
「川向こうで?」
みんなが、まず目を向けた先には、とうとうと流れる、大きな川。
この町のある、こちら側の岸と向こう岸とを分かつ流れでした。
その向こう、土手の一部から白い煙と火の手があがり、その近くを、右往左往している人の姿もありました。
爺やは手を止め、言いました。
「さぁ、こうしてはおれません。早く避難の準備を」
「どうしてだい?」
栗毛の少年の問いを受け、爺やは続けます。
「あの火が、こちらに燃え移るかも知れないからです。火事により、住む家どころか、命までも奪われた者もいるのです」
まぁ、と巻き毛の少女が眉をひそめます。
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