春の中

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「興味ありませんわ。それよりも、こちらの方が(たの)しくてよ」 「そうですわよ。爺やは考え過ぎではないかしら? こちらは、川の反対側よ」 豊かな黒髪の少女が続き、 「向こう岸の火事なんて・・・・・・よその世界で起こった事だろう。ボクたちには関係ない話だ。さぁ、宴の続きを」 栗毛の少年も応えます。 そして、見えないようにと背を向け、すぐにまたきゃっきゃと声をあげ始めました。 ほんの一瞬だけ。 爺やの表情(かお)に影が差しましたが、花咲く国の若人(わこうど)たちが気付く事はありません。 「(おお)せのままに」 爺やは再び視線を落とすと、真っ白な手袋をはめた両手を、手際よく動かし始めました。 (どうして無関心でいられるのでしょう? 川の向こう側もこちら側も、同じ世界に存在している。 風向き次第では、火の粉が飛んで来ないとも限らないのに。 ・・・・・・現実に背を向け、目の前の小さな世界に引き込もった所で、何も変わらないというのに) その思いとため息を一緒にのみこんで。
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