冬Ⅰ

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夢を見た。 いつも見る、あの夢だ。 黒い世界に立ち尽くす小さな少女。 顔は暗闇でよく見えない。 そして、彼女に向かい合う「なにか」がいた。 それは誰なのか、そもそも人なのかもわからなかった。 ーお前はどうしてほしい? 「なにか」が感情のない声で尋ねる。 ー×××てほしい。 泣きそうな声で彼女はそれに答える。 ーそうか。じゃあ、またな 彼女の身体が闇に溶けた。 「………か!トーカ!」 「っ?ああ、夏子(かこ)ちゃんか…」 窓から茜差す教室で、冬香(とうか)は揺すられて目を覚ました。 「すごい熟睡してたな。ほっぺに痕付いてる」 「眠くなって…昼放課から寝てた…」 「マジか」 解散したクラスメイト達は皆それぞれ部活に向かっている。 彼女ら二人を含め、帰宅部の生徒は教室でグループになってお喋りしていた。 「前に行ったクレープのお店、新作出たんだって?」 「そうそう!アイス乗ってるやつ!」 「えーまだ寒くない?」 「…」 「………トーカ、クレープ食べたいのか?」 楽しげに会話する様子へ視線を向ける冬香に夏子は尋ねる。 「え…ううん!違うよ。あの子を見てたの」 そう答えて彼女は一人のクラスメイトを指さした。グループの中でも一際目を引く少女だ。 「…西川秋楽(あきら)、か」
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