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秋楽は学校の中でも有名な生徒の一人だ。
何度もスカウトの声がかかっているという彼女は容姿だけでなく、頭もよくしっかり者の娘だった。
生徒会長と交際していることも噂の種のひとつだが、帰宅部なので放課後の様子やプライベートの謎も多い。
「…綺麗だなあ」
「まあ確かに美人だけどさ、…話しかけに行く?」
「いや、いいよ…帰ろっか」
憧れるが、彼女なりの気苦労や悩みもあるだろう。
ただその現実を何となく知りたくない。だから冬香は秋楽を避けている。
「じゃあまた明日なー!」
大きく手を振る夏子に控えめに手を振り返す。
冬香にとって、夏子は数少ない…否、唯一と言ってもいい友人だ。地味で話題もそう多くない自分に初めて話しかけてきたのは彼女だった。
サバサバとした性格の彼女に圧倒されることもあるが、気持ちをハッキリ伝えてくれるという意味では付き合いやすい。何より口下手な冬香を助けてくれることも多い、頼れる存在だ。
…そして、彼女と別れるとまた、静かでつまらない自分だけになる。
「…なーに湿気た顔してんのおねーさん?」
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