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わたしはあの夏を忘れられない。
りら姉ちゃんと会った最後だからだけではなく、家族としての思い出を作った最後の夏休みになってしまったからだ。
あの夏休み以降、家の中は氷のように冷えきっているか、怒号が飛び交っているかのどちらかだったので、お父さんがわたしたちに家を譲って出ていったときは、悲しみよりも安堵が大きかったことを覚えている。
わたしは中学生になると同時に、苗字が変わった。
せっかくりら姉ちゃんと同じ苗字になったのに、りら姉ちゃんは親戚の集まりに顔を出すことは二度となかった。
りら姉ちゃんにもらったオイルの小瓶は、お父さんとお母さんの離婚が成立した日、庭の隅に埋めた。
それでも、わたしの指先にはあのとろりと甘いにおいが今でも染みついているような気がする。
大人になったわたしの体からは、ちゃんとわたしの香りがしているだろうか?
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