りら姉ちゃんの来た夏

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 その次の日は久しぶりに電車に乗った。  「きゃー! 五能線! 日本一有名なローカル線!」  駅のホームに入ってきた電車を見るなりりら姉ちゃんが叫ぶので、周りのひとが何人か振り返った。  「え、そうなの?」  お父さんが楽しそうにきき返す。  りら姉ちゃんはまたわたしに携帯を渡して電車と一緒に写真を撮らせたあと、  「ね、叔父さんも一緒に写りません?」 と言って、お父さんの腕に腕をからめた。  発車のベルが鳴り、お母さんがあわててわたしたちを車内に押し込むようにして、乗車した。  「青池なんて、久しぶりに見だなあ」  帰りの電車で、お母さんが満足そうにつぶやいた。この何日か、お母さんがぴりぴりしているように見えたので、わたしはほっとする。  「本当にインクを流したようにきれいに見えますよね」  りら姉ちゃんは、携帯電話に撮りためた写真を何度も確認している。  「結婚前に、行ったんだよな。あのときイトウも食っだっけか…」  「食っでねえよ。やあだお父さん、誰ど勘違いしてるんだべ」  青池の前では、お父さんのカメラを観光中のひとに渡して、全員で写真を撮ってもらった。わたしは初めてりら姉ちゃんと一緒に写真に写った気がする。  「ほら、夕日が」  日本海がきらきらと金色に照り輝いている。こんなの初めて。わたしはこっそり感動した。  せっかく窓側の席に座っているのに、りら姉ちゃんはいつのまにか隣りのお父さんの肩にもたれて眠っていた。
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