りら姉ちゃんの来た夏

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 秋田で希望していた観光先をすべて回ったあと、りら姉ちゃんは家から出なくなった。  昼まで眠りこけ、午後も寝転がって雑誌を読んだり、マニキュアを塗り直したり、携帯電話で誰かとメールをしたりしてだらだらと過ごす。  「りらちゃん、買い物行くけど一緒に行かない?」  お母さんが声をかけた。  「んー…、いいです」  昼寝をしていたりら姉ちゃんは、枕から顔も上げずに応えた。うつぶせに寝ていたので、枕に圧迫されてくぐもった声だ。  わたしは自分の机で夏休みの宿題を進めていた。計算ドリルがもう少しで終わりそうだ。  お父さんは短い夏休みが終わってしまって、今日から会社だ。  「手伝ってくれない? っていう意味なんだけどね」  お母さんが低い声で言う。わたしがはっとして顔を上げたときには、お母さんは部屋を出て行ってしまっていた。  「だったら最初からそう言えばいいのにね」  りら姉ちゃんはそのままの体勢でつぶやくように言うと、またまどろみ始めてしまった。
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