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「お皿一枚、洗いやしないのよ」
お母さんの固い声に、お風呂から上がってお茶を飲みに台所へ来たわたしはびくっとなった。
居間のテーブルに座り、お母さんは電話の子機を耳にあてている。
そのたった一言で、電話の相手が久雄伯父さんであること、りら姉ちゃんについての話をしていることを、わたしは悟ってしまった。
今更聞いていないふりもできなくて、わたしはどきどきしながらコップにお茶を注ぐ。
お風呂からは、りら姉ちゃんがお湯を使う音が聞こえてくる。
「母さんの墓参りさ行ぐでもねぐ、毎日毎日昼まで寝て、ずーっと部屋でごろごろしでらよ。…うん。…え? 竿燈はもう終わったよ兄さん、何言ってんの」
わたしは今にもりら姉ちゃんがお風呂から上がってきてこの話を聞いてしまうのではないかと、気が気じゃなかった。
その場を動けないまま、こくりこくりとお茶を飲む。
「…下着みでった格好でうろついて。おしゃれできれいなのはいいんだけども、ちょっと非常識でねが? …うん…うん…こんな子だったっけかって思うわけよ」
ああ、やっぱりお母さんは怒っていたんだ。
なんとなく足をしのばせて部屋へ戻ったあとも、心臓がどきどきしていた。
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