りら姉ちゃんの来た夏

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 「出かけてばっかりじゃ家事が溜まっちゃうわ」とお母さんが言うので、その次の日は家で過ごした。  わたしの部屋に運び込まれたお客さん用の折りたたみベッドからりら姉ちゃんが起きてきたのは、お昼ごはんができる頃だった。  毎日3度の食事を欠かさずとるという習慣に疑いを持っていなかったわたしは「朝ごはんを食べない」という選択肢があるなんて知らなくて、びっくりした。  りら姉ちゃんは、自由だ。  「んー、おはよー。牧場って体力使うよねえ」  りら姉ちゃんはちょっぴり言いわけっぽく言いながら、ベッドから降りた。  すらりとした長い脚。肩ひものとても細い服と短パンが、りら姉ちゃんの寝巻きだった。  その格好のまま顔を洗って食卓についたので、お母さんが「寒くない?」とミートソーススパゲティを盛りつけながらきいた。  「え? あたし基本これですよ」  「食べるときも?」  「ええ」  「…そう。なんだか、下着みたいだから」  お父さんが気まずそうに咳払いして、なんだかまた変な空気になった。  お母さんは怒ったときだけ標準語になることを思いだしながら、わたしは黙ってスパゲティをすすった。
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