第1章

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『ここでレイアウトしているデザイナー達は、うちの社の専属であり、パッケージの三割は彼らが担当している。後の七割とポルノ以外の作品関しては、だいたいフリーのデザイナーにいらいしてもらう。ほら、そこにあるのがそうだ』 副社長はそう言うと、顎でショーケースをさした。おれはやおら視線を向けると、そこには、子供を対象としたアニメ・ビデオのスチール写真に、金で縁取りをほどこした原色の文字が調和して、作品のイメージをより一層引き立てた原画があった。綺麗に仕上がっていて、賛美に値する出来ではあったが、おれは、何故か子供の頃の記憶を思い出す方に感じ取っていた。 『良かったら、他のスチール写真もストックしてありますから、ご覧になりますか?』 副社長は言うと、自分のオフィスへ歩き始めた。 鍵つきの棚には、なん作ぐらいの作品がファイルしてあるんだろう。とても一時間くらいでは、見るに追い付かない。それでも、なるべく作品の順番で多くを見ようと、目を通していった。 『所で、ミスター・クロキ。君は映画は好きかな』 三人向かい合う格好で腰かけていた真ん中で、突然に副社長が訊ねた。この言葉を皮切りに、映画の話に染まり始めた。
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