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確かに手応えのある話だが、当時23のおれには、300ドルとなると、かなり気が重い。
今回のアメリカ行きには、アシストが居る訳ではないので、勿論経費を贅沢に使う訳には行かない。往復の旅費で30万は使っていた。滞在費にも安宿を使ってるとは言え、頭の悩む事だった。
かと言って、もしこのチャンスを逃したのでは、またやけ酒を浴びる事になる。愛用のギター、リッケンバッカーを売って勝負に出てみるかと思い、ここはひとつ持ち前の、当たって砕けろの精神で行ってみるかと思い、キリだそうとした。その時、
『じゃあ、こうしませんか。ぼくが半分負担しますから、会ってみましょうよ。滅多にあるチャンスだし、一度くらいそう言う事がないと、友達に自慢できる話が無くなってきますからね』
サムは照れくさそうに言うと、首をすぼめておれを伺った。
サムがおれの愛犬なら、頭を撫で回したい気分だった。
『そう言ってくれたら話は早い』
おれが言うと、これで結論が出たとでも言うように、ゴードンは立ち上がった。
『それじゃ早速仲間に連絡を取ってみるよ』
ゴードンは鞄をまとめ肩にかけると、握手を求めてきた。
『わかり次第サムに連絡をしておくよ。今日はありがとう、健闘を祈るよ、ミスター・クロキ』
そう言い残すと、大股でレストランを出て行った。
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