第1章

6/14
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
確かに手応えのある話だが、当時23のおれには、300ドルとなると、かなり気が重い。 今回のアメリカ行きには、アシストが居る訳ではないので、勿論経費を贅沢に使う訳には行かない。往復の旅費で30万は使っていた。滞在費にも安宿を使ってるとは言え、頭の悩む事だった。 かと言って、もしこのチャンスを逃したのでは、またやけ酒を浴びる事になる。愛用のギター、リッケンバッカーを売って勝負に出てみるかと思い、ここはひとつ持ち前の、当たって砕けろの精神で行ってみるかと思い、キリだそうとした。その時、 『じゃあ、こうしませんか。ぼくが半分負担しますから、会ってみましょうよ。滅多にあるチャンスだし、一度くらいそう言う事がないと、友達に自慢できる話が無くなってきますからね』 サムは照れくさそうに言うと、首をすぼめておれを伺った。 サムがおれの愛犬なら、頭を撫で回したい気分だった。 『そう言ってくれたら話は早い』 おれが言うと、これで結論が出たとでも言うように、ゴードンは立ち上がった。 『それじゃ早速仲間に連絡を取ってみるよ』 ゴードンは鞄をまとめ肩にかけると、握手を求めてきた。 『わかり次第サムに連絡をしておくよ。今日はありがとう、健闘を祈るよ、ミスター・クロキ』 そう言い残すと、大股でレストランを出て行った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!