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寄り添うモノ
祖母の葬儀で見かけた不審人物。
弔問客の真後ろにぴったりと寄り添って、焼香の先ですらその側を離れない。だけど誰も何も言わないから、何か障害があって一人では行動させられず、ああして誰かが付き添っているのだと思った。
でも後で聞いたらその人物を見たのは俺だけだった。
会場は混雑していたし、焼香は二、三人一緒にすることもあるから、たまたまぴったり寄り添っているように見えたのだろう。そう考えて葬式の件など忘れかけた頃、親の会話で、祖母の葬儀に出てくれたその人が亡くなったことを聞いた。
ただの偶然。普通はそう思うものだが、何故か背後の寄り添う人物のことが頭から離れず、理由をつけてその人のお葬儀に参加させてもらったら、また、弔問客にひだりと寄り添う不審人物を見かけた。でも祖母の葬儀の時同様に、その姿は俺にしか見えなかったらしい。
どうやら俺には人に見えない何かが見えていて、その何かに寄り添われた人は亡くなってしまうらしい。
それを認識して数年。ちょこちょこと葬式に顔を出すこともあるが、今回は、式が終わってからがかなり大変そうだ。
会場のあちこちに、真後ろにぴったりと、顔のよく見えない人影にへばりつかれた人がいる。
経験上、この人達はみんな一年以内に亡くなる人達だ。でも今回は人数が多過ぎる。
天災か、はたまた大規模事故でも起こるのか。人の葬式の席なのに、そればかりが気になってしまう自分がいる。
寄り添うモノ…完
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