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2 三か月前
三か月前――一月中旬の土曜日。
洋一は昨晩泊った女の家から自宅へとバイクを走らせていた。時刻は午前五時。段差で高速道路と隣接している国道は、早い時間帯のせいか空いていた。洋一はスピードを出しすぎることもなく、マイペースでバイクを運転していた。少し体がだるかったし、「腹減った……」と声に出してしまうほど空腹を覚えていた。
ふと、薄暗い視界の右隅に、コンビニの明かりが見えた。洋一は次の交差点で右折した。
コンビニの駐車場でバイクを止め、ヘルメットとグローブを外して、店のなかに入ろうとしたときだった。ドア近くにあるゴミ箱の前で、脚を投げ出して地べたに座っている少年と目が合った。
見た目は小柄で幼いが、生意気な目つきをしている。少しつり気味の三白眼はお世辞にも愛嬌があるとは言えない。パサついた金髪は、ブリーチのせいで傷んでいそうだ。
少年が口を開けたので、何を言われるのかと洋一は少しだけ身構えた。
「バイク、カッコいいっすね」
「ああ――そう? ありがと」
予想外の友好的な言葉に、洋一は拍子抜けした。
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