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「あれも星なんだぞ。俺達が住んでるこの星と同じくらいの歳だ」
「じゃあ、あれも、死んじゃうの?」
「あそこにも人が住んでた時代があったらしい。その頃からあそこは、今と変わらない姿で空気も水もない」
「死んでるってこと?」
「さぁな……わからん。でも、月がなければ俺達は生きていけない」
「海が天を覆っていた頃は、海の向こう側にあったのに」
「海面が輝いて、きれいだった」
「世界は終わっちゃうんだね……」
ラムドがファリファンの手を握り直した。
「まだ、時間はある。俺達が生きている間は、大丈夫さ」
――が、それも不安にさせまいとして言っているだけだということは、わかっていた。
「そうだね」
ファリファンもラムドの手を握り返す。
「今度から俺のことは名前で呼べよ」
答える前に、ラムドがファリファンの指の間に自らの指をめり込ませ、手の甲に這わせた。
「手を繋ぐときは、ちゃんとこうするんだ」
ファリファンは、月明かりが照らすその顔を見上げ、瞳の奥を見つめた。
手の甲に這う指先から熱いほどの温もりが伝わってくる。
心臓はバクバクと大暴れし始めていた。
(また、息苦しくなってきた……なんで?)
「ちゃんと、感じてる?」
「えっ?」
「今の気持ち――」
不意に、ラムドの<自覚させてやる>という言葉が蘇る。
「あの……」
言葉に詰まっていると、ラムドが悪戯っぽく片目をパチンと弾くように閉じた。
「もう、お兄ちゃんなんて呼ばせないからな」
魅力的な表情に射抜かれた場所から体温は上昇し始め、ついには頭から火が吹きそうなほど顔全体が火照り始める。
(何、この気持ち――)
ファリファンは、どうしようもなくなって俯いた。
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