Ep① 淡く染まる心

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「あれも星なんだぞ。俺達が住んでるこの星と同じくらいの歳だ」 「じゃあ、あれも、死んじゃうの?」 「あそこにも人が住んでた時代があったらしい。その頃からあそこは、今と変わらない姿で空気も水もない」 「死んでるってこと?」 「さぁな……わからん。でも、月がなければ俺達は生きていけない」 「海が天を覆っていた頃は、海の向こう側にあったのに」 「海面が輝いて、きれいだった」 「世界は終わっちゃうんだね……」  ラムドがファリファンの手を握り直した。 「まだ、時間はある。俺達が生きている間は、大丈夫さ」  ――が、それも不安にさせまいとして言っているだけだということは、わかっていた。 「そうだね」  ファリファンもラムドの手を握り返す。 「今度から俺のことは名前で呼べよ」  答える前に、ラムドがファリファンの指の間に自らの指をめり込ませ、手の甲に這わせた。 「手を繋ぐときは、ちゃんとこうするんだ」  ファリファンは、月明かりが照らすその顔を見上げ、瞳の奥を見つめた。  手の甲に這う指先から熱いほどの温もりが伝わってくる。  心臓はバクバクと大暴れし始めていた。 (また、息苦しくなってきた……なんで?) 「ちゃんと、感じてる?」 「えっ?」 「今の気持ち――」  不意に、ラムドの<自覚させてやる>という言葉が蘇る。 「あの……」  言葉に詰まっていると、ラムドが悪戯っぽく片目をパチンと弾くように閉じた。 「もう、お兄ちゃんなんて呼ばせないからな」  魅力的な表情に射抜かれた場所から体温は上昇し始め、ついには頭から火が吹きそうなほど顔全体が火照り始める。 (何、この気持ち――)  ファリファンは、どうしようもなくなって俯いた。   
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