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「ねぇ、どうして海はなくなってしまうの?」
「年寄りになったからさ」
「えっ?」
目を瞬かせるファリファンの頭の上に手をのせてクシャクシャッと髪を混ぜ返す。
「人が年を取るように、この世界を支えている大地も年を取る。それは、自然界の崩壊へも繋がるんだ」
「そう……なんだ……」
「俺達が住んでいるここも星だって知ってたか?」
「夜になると天空に浮かぶアレ?」
ラムドが腰ベルトにぶら下げたなめし革の袋の中から飴玉を一つ取り出した。
差し出されたそれを受け取ったファリファンが口の中に放り込む。
「宇宙と呼ばれるそこには、沢山の星々が至る所にあって輝いているんだ」
ファリファンは口の中に広がる薄っすらと甘い塊を指先でつまんで取り出した。
次は、ラムドの番だ。
無言で差し出した。
ラムドが腰を下げて目線をファリファンに合せると、ひな鳥のようにかぱっと口を大きく開ける。
「甘くなくなっちゃったね」
歯でカラカラと音を立てて飴玉を転がすラムドが再び指でそれを取り出した。
「糖蜜が手に入り難くなったからな」
唾液でてらてらと濡れ光る固まりをファリファンの口の中へと押し込み、飴玉の名残りが絡みつく指先をペロッと舐める。
16になったばかりのファリファンより4つも年上で、その大人な仕草から目が離せずにいた。
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