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帰る道すがら――。
辺りはすっかり闇に呑まれて、足元もまともに見えない。
「怖いか?」
ファリファンは、繋いでいるラムドの手を握り返した。
「お兄ちゃん、怖いの?」
「俺は、男だぞ」
「大丈夫だよ、わたしがいるからね」
「いや、そうじゃなくて――」
ラムドが気遣ってくれているのはわかっていた。
しかし、なんと答えたらいいのか――。
「ファリファン、本当に怖くないのか?」
心がない――いや、何も感じまいとしている者に、あえてそれを聞く意味などあるのだろうか。
ファリファンは拳一つ分もひらいていない、真ん前にあるラムドの背中をもう片方の手で摩った。
「怖くないからね、大丈夫だよ」
途端、立ち止まられて顔面から突っ込んでしまう。
「じゃあ、この先、何かあったとしても――俺から離れて遠くへ行くなよ」
「お兄ちゃん?」
「俺は、この手を放したら、お前が闇の中に紛れてどっかへ行きそうで怖い」
「わたしは、迷子になんかならないよ?」
「迷子になっているのは、俺の方だ。だから、ちゃんと手を繋いでいてくれ」
ファリファンは、ラムドが帰る道がわからなくなったのだと思った。
「場所、変わろうか? わたしが先頭に立った方がいい?」
「いや、いい。それより――」
クルッと身体の向きを変えたラムドがファリファンを正面から抱き締めた。
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