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時はジークの劣化が治り、シュヴァリエが自分の在り方を模索している頃。
リアとアイリーンが夕食の片付けをしている音が響く中、一番風呂を頂いたティアンナと共にシュヴァリエはテーブルに広げたアルバムを見ていた。シュヴァリエは時折ライ達の思い出に触れては、より深く人の感情や表情、仕草、そして成長を学んでいる。
「ライ!いい加減湯船に飛び込むのやめてよ!」
「別にいいじゃねぇかよぉ。お前こそ羽が散るから湯船入んなよ。」
「今の聞いた!?鳥翼族差別だ!!」
「抜けたところで消えるやん。」
「そーだそーだ!」
「風呂くらい1人でゆっくり入りたいんだけど……しかも男ばっかりとか、何の罰ゲームだよ。」
「大人数の方が楽しいやんか!ライは要らんけどな。」
「んだとォ!?」
「なんや、やるかァ!?」
「また俺のシャツ着てる……返して。」
「嫌!コレは今日のアタシの寝間着なんだから。」
入浴を終えた男5人が脱衣場から出てくると一気に騒がしさが戻る。入浴後一発目の喧嘩を始めるライとエディがリアに鉄拳制裁され、頭にコブを作ったライはぶすくれながらシュヴァリエの隣に座る。
「痛ってぇなぁ、もう……また見てんのか?」
「うん。師匠、この写真を撮った時の話を聞かせてほしい。」
シュヴァリエが指差す写真に写る幼き日のライとリアは珍しく暗い表情をし、周りの大人の達は2人を慰めたり笑ったりしている。後方には飲食店と思われる建物が建ち、ライとリアの腰にはサロンが巻かれている事から店の手伝いをしていたと予想出来る。
ライとリアはシュヴァリエの指す写真を見るや顔をしかめる。
「確かに記念ではあるが、苦い思い出でもあるな……」
「何々、気になるじゃない。」
「僕が来る前の写真だよね?聞かせてよ!」
多少なりとも皆興味があるようで、ライとリアの2人に視線が集まる。
「しゃーねぇーなぁ……この写真はな────」
―――――――――――――
ライとリアは空腹と寒さで行き倒れそうになっていたところをエリーゼに助けられ、そのままローナの町へ住む事になった。町人達は彼らをすぐに受け入れ、長らく使われていなかった山の上の宿屋を掃除、修理、補強し、備品の整理を行い住める状態に。更に各々が家から使わなくなった道具や衣服を持ち寄り生活環境を整えてくれた。食材も金銭も全てローナの町の人々が負担し、ライとリアは労せず快適な暮らしを手に入れたのだが、それこそが2人にとって不満だった。
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