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事情を聞いていた店長はライとリアを大きめの制服に着替えさせ、まだ開店前の店内で店主は接客から調理まで、大まかな仕事の手順を教える。
必死にメモを取るリアと、口を半開きにしてただ聞いているライ。頭に入っているのかは彼にしか分からない。
エリーゼが彼らの初仕事にレストランを選んだ理由は、まだ交流を深められていない町の人間とも関われる仕事だからだ。バイアス族の彼らを助けてくれる人間は少しでも多い方がいい。
朝の時間帯は朝食とコーヒー等をゆっくり楽しむ客が多く、少しのミスはありながらも2人は順調に仕事をこなす。慣れもあり、充実感を感じ楽しみながらライとリアは仕事をこなす。
しかし彼らはまだ知らなかった。一番大変なのは昼時だという事を。
ちらほらと空いていた席はほんの数分の間に満席になり、通い慣れた町人は席に着くなりオーダーを言い渡し、注文の嵐が店を襲う!普段は店主と妻の2人で切り盛りしているというのだから信じられない光景。
「ライ!少し厨房手伝え!」
「は、はいッ!」
急な混雑に混乱するライは店主に呼ばれ厨房に立つ。しかしパニック故に覚えた筈の調理手順を忘れ、料理を焦がし、サラダもまともに作れない始末。
「もういいから、空いた皿下げてこい!」
先程まで優しかった店主はどこへやら。飛び交う声に余裕の無いライは再びホールへ。客は皆かき込む様に料理を食べ客席の回転が早い。ライは出来るだけ多くの皿を一度に持って戻ろうとするも、ぷるぷると震える腕は重さに耐えかねド派手に食器をクラッシュ。
リアもリアでレジの操作に手間取り、メモを見ながらたどたどしくボタンを打ち込む。
「えっと……3万2600シェルです。」
「えぇ!?そんな訳ないよ!?」
「す、すみません!どこを間違ったかな……えっと、あれ……?」
飛び交うオーダー、溜まる料理、ライが割った皿の始末、そして列を成すレジ。普段冷静なリアも段々とパニックになり、レジの操作一つまともに行えない。
「リアちゃん、レジはもういいから割れた皿を片付けてくれる?ケガしないようにね。」
店主の妻が助け舟に入り、リアはホウキとちりとりを持ち皿を片付ける。
片やライはカウンターに所狭しと並んだ料理を客席へ運んでいく。
「おまたひぇひまひた。えっほぉ……飯ですッ!(訳:お待たせしました。えっとぉ……飯ですッ!)」
「お前が食ってどうすんだ!?」
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