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「これはあれっスよ、毒味?」
「毒入りの飯なんか出すか!」
「じゃあ味見っス。」
「それは厨房でやってるの!」
ライは客の注文した骨付き肉を頬張りながら接客、客にツッコまれながらも吹っ切れたのか悪びれる様子も無く言うも、飛んできたリアに殴られ共に謝罪。
失敗続きのランチタイムは嵐の様に過ぎ去り、昼時を過ぎるとパタリと客足が止まる。しかしその後もランチの後片付け中に更に食器を割ったり、仕込みの材料の切り方や量を間違えたり、レジのエラーを引き起こしたりとミスのフルコース。
一時的に店を閉める中休みになり、ライとリアは漸くソファーに座ると重い溜め息と共にテーブルに沈む。
彼らの働く姿をずっと見ていたエリーゼは楽しそうに笑いながらライの隣に座る。
「どうだった?初仕事は。」
「大変だったっス……」
「ミスばっかりで……申し訳ないです……」
慣れない作業に頭を使い、店の状況を把握する広い視野を求められ、営業を円滑に回さなければいけないプレッシャー、立ち続けて足は棒のよう………働くというのは思っていたよりずっと大変で、その上に重なったミスが心に重くのしかかる。どんよりと凹んでいるライとリアの元へ一段落ついた店主と妻が訪れる。
あぁ、怒られる………何を言われようが弁解出来ない働きっぷりだった。賃金を貰うどころか弁償しなければと自覚している2人は店主と妻の顔を見られず視線を落としていた。
「ありがとね、この子らを使ってくれて。」
「とんでもない、よく働いてくれましたよ。」
「初仕事の記念に、写真でも取りません?」
エリーゼと店主、店主の妻は浮かない表情のライとリアを連れ出し店の前で記念写真を取る。シュヴァリエ達が見ていたのはこの時の写真だった。
「お前ら、何食いたい?」
「「え?」」
声を揃えて顔を上げるライとリア。店主も妻も怒りや苛立ちは無い、至って普通の表情だった。
「え、じゃなくて。腹減ったろ?食いたい物のリクエストは?」
「でも、失敗して迷惑ばかり掛けましたし……」
「そんなの当たり前でしょう?初めてだったんだから。」
「客の料理食べちゃったし……」
「うん、それは初めてとか以前にお前が悪い。」
ライだけは今一度こっぴどく怒られたところで店内に戻り、店主の好意によりお腹いっぱい賄いを食べさせてもらった。
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