13人が本棚に入れています
本棚に追加
「ライっ!ちょっと!!」
冬のある日の昼下がり。もはや聞き慣れたリアの怒鳴り声が家中に響く。
2階の自室でギターを弾いていたライはビビりながらもすぐさま階段を駆け下り、怒り顔のリアの前に現れる。
「な、なんスか?」
「見ろ!」
リアが指差すのは、リビングから一面に庭を望める大窓付近に置いてあるロッキングチェア。リアが掃除をしている最中動かした時に左脚が壊れているのを発見。猫に化身し暖炉前で丸くなっていたフレイに聞いても知らないと言われ、家の中の物を壊して黙っているのはライしかいないと断定、大声で呼び付け今に至る。
「壊したのはお前か!?」
「はぁ?この前自分で“蹴飛ばして壊しちゃった”って言ってただろうが!」
険しい剣幕で迫っていたのも束の間、ライの言葉を受けたリアは視線を外し思い返してみる………確かに2日前、仕事から帰りクタクタになっていた時に不注意で蹴飛ばし破壊、己の脚力の強さに若干引いた事を思い出す。
「あ……そうか、私がやったんだ。疑ってすまなかった。」
「ったく、何でもかんでもオレのせいにすんなよな!頭に回す栄養までおっぱいに取られてんじゃねぇの?」
「むっ!……す、すまん……。」
疑われるのは日頃のライの行いの悪さ故。しかし今回は自分に非がある以上、ライの憎まれ口にもぐっと堪えてリアは謝る。
リアは掃除を再開し、ライは不機嫌な顔でソファーに座るとテレビを観始める。
そこはかとなく険悪な雰囲気が流れる中、化身を解いたフレイがライの隣に座る。
「リアだってド忘れしたり間違える時もあるさ。」
「別に怒ってねぇし。」
そう言うライはやはり不機嫌。フレイは掃除機を掛け前屈みになっているリアを暫く見つめ、こっそりライに耳打ちする。
「リアの胸、やっぱ大きいよな……。」
「そりゃ見るからにデケェだろ……。経験豊富なフレイ先生の見立てだと何カップ……?」
「そうさな……G…いや、Hありそう……。」
「H!?A、B、C……H!?文字通りエロいじゃねぇかッ!」
「その上鍛えてるから形もいいと見た。」
「形!?全部丸じゃないんですか!?」
「いやいや、結構違うよ?」
先程までの不機嫌さはどこへやら、くだらない話をしている2人はリアからの突き刺す様な視線に気づき押し黙る。
リアは一つ溜め息を吐き、キッチンを掃除しようとスイッチを押す。………が、何度押しても電気が点かない。電球が切れてしまっているらしい。
最初のコメントを投稿しよう!