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第1章 理想と現実
欲しかった。
自分の正義を通せる力が。
神にも悪魔にもなれる、誰にも負けない絶対的で唯一無二の力が。
力を手に入れて何がしたいかって?
それは俺にもまだわからない。
ただ俺は漠然と願う。
決まったナニカになりたいわけでもないけれど。
それでも、強い力を欲しているのだ。
◆◇◆◇◆
時は2035年。
桜のシーズンも終えて夏が近づいてきた今日この頃。
ここは中部地方の某県、都心から少し離れた町にある県立真芯高等学校。
午後二時三十分、授業終了のチャイムが校内に鳴り響くと学生たちは明日に迫る学園祭に向けての準備を開始した。
出店やお芝居、クラスごとの出し物、バンドの練習など、それぞれが自分達に課せられた役割を楽しみながら作業に勤しんでいる中で、とある一人の少年はそっと教室を出ていった。
「……皆ご苦労なこった」
愚痴りながら人で溢れる廊下を掻き分け、校舎の一番端にある屋上への階段を駆け上がった。
立て付けも悪い上に重い扉を力を込めて開ける。
「誰も居ないな?」
昼過ぎこの時間、静かな屋上の隅っこで日陰が出来ている壁際のベンチ。この場所で本を読むのが少年の楽しみなのだ。
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