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林間学校の用意で授業が休みになるのは、そんなに不自然ではなかった。
起立例着席をすることもなく、担任が出て行った。
するとクラスメイトが何人か僕の方にやって来た。
一人は痩せこけた眼鏡の少年、もう一人は太った少年だ。
「いよ、黒木。これから電算室行かね? どうせ予定ないだろ?」
痩せた方の少年。鈴木琢己が眼鏡を光らせた。
眼鏡は指紋だらけ、襟と袖が汚れている。
寮長に見つかったら外出禁止にされるだらしなさだ。
黒木と呼ばれたのは僕。
僕は黒木晶。
なんとなく予想はついているだろうが、クラスのオタクグループに所属している。
「……まあな。お前らもか。彼女とかいないのか?」
「俺たちに彼女とかいるとでも思うのかい? 俺たちは生まれながらの負け組なんだよ!」
よく肥えた少年。香川英二が鼻息を荒くした。
まだ五月だというのに首回りが汗でにじんでいる。
僕たちは自分を卑下して【負け組】などと言ったが、それは本心ではない。自虐ネタというやつだ。
僕たちは徴兵されたあと、兵役を1期2年経過すれば、国がDNA的に最適な伴侶を世話してくれることになっている。
ガツガツと女子の尻を追いかける必要はない。
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