第一話

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 林間学校の用意で授業が休みになるのは、そんなに不自然ではなかった。  起立例着席をすることもなく、担任が出て行った。  するとクラスメイトが何人か僕の方にやって来た。  一人は痩せこけた眼鏡の少年、もう一人は太った少年だ。 「いよ、黒木。これから電算室行かね? どうせ予定ないだろ?」  痩せた方の少年。鈴木琢己(すずきたくみ)が眼鏡を光らせた。  眼鏡は指紋だらけ、襟と袖が汚れている。  寮長に見つかったら外出禁止にされるだらしなさだ。  黒木と呼ばれたのは僕。  僕は黒木晶(くろきあきら)。  なんとなく予想はついているだろうが、クラスのオタクグループに所属している。 「……まあな。お前らもか。彼女とかいないのか?」 「俺たちに彼女とかいるとでも思うのかい? 俺たちは生まれながらの負け組なんだよ!」  よく肥えた少年。香川英二(かがわえいじ)が鼻息を荒くした。  まだ五月だというのに首回りが汗でにじんでいる。  僕たちは自分を卑下して【負け組】などと言ったが、それは本心ではない。自虐ネタというやつだ。  僕たちは徴兵されたあと、兵役を1期2年経過すれば、国がDNA的に最適な伴侶を世話してくれることになっている。  ガツガツと女子の尻を追いかける必要はない。     
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