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眩しさがおさまり、目を開けた先にーー。
尖んがった無数の先端が俺を狙う。
「おわっ!!」
反射的に後ろに飛びのいた俺は、その先の何かにぶつかって小さく跳ね上がる。
振り向けばそこにいたのは、俺と同じ30代ぐらいのネクタイスーツ姿の男だ。
真面目そうな黒ぶち眼鏡をかけ、頭の良さそうな端正な顔立ちとパリッと背筋を伸ばした雰囲気が、俺の苦手な人種そのものだ。
片手にはブランド物の黒のビジネスバッグを持っている。ネクタイもスーツも高そうだ。きっと高給取りのエリートなんだろう。
残念ながらこんなエリートサラリーマンと、電車や近所でちらっとでも見かけた記憶も会った記憶も、まったくなかった。
「・・・どこから」
「君こそ・・・」
だがそれ以上の会話を続けることができなかった。
なぜなら俺達二人は、周りをぐるりと原住民たちに囲まれていたからだ。
上半身は裸で下半身を長い緑の葉っぱを束ねたスカートのようなもので隠している。
テレビで見る、密林の奥なんかで出会う少数部族と同じ感じだ。
その原住民たちは棒の先に尖った包丁を取り付けた槍を、俺達に向けたまま、険しい表情で叫んだ。
『勇者はどっちだ!?』
「勇者?」
お決まりのゲームキャラだ。
勇者って、世界を救うアレだろ?ーー花形主人公ってヤツだ。
だが原住民の雰囲気からは、歓迎する様子がない。
むしろ「勇者は俺だ」と言った途端に刺されそうな、不穏な雰囲気が漂っている。
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