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「勇者?知らんな。私ではない」
「わっ、てめぇ!」
のんびり分析している間に、エリート野郎が悪そうな性格そのままに、俺の背中を押して逃げ出す。
俺はスタートしそこねて逃げ遅れ、原住民に取り押さえられてしまった。
「違う違うっ!俺は勇者じゃねぇ!」
必死に叫ぶ。原因も理由も分からなかったが、命の危機にあることだけは痛いほど分かった。
『嘘を言えば、丸焼きにするぞっ!』
「ほんとだって!勇者はあいつだっ!勇者っ、早くしないと逃げちまうぞっ」
『じゃあ、お前は誰だ?』
「誰ってーー」
『そいつぁ、奴隷じゃねぇか?』
答えに詰まった俺の代わりに野太い声が響く。
原住民の間から、ひときわ大柄なーー筋肉ムキムキの熊みたいな大男が現れた。
ワカメのようなくねった黒髪、浅黒い裸、頬やさらした腕に刻まれた無数の傷は、それだけでヤバい相手だと説明していた。
『ソイツの足、奴隷の証がついてんだろ?黄色の輪っかはザレーゼ王国の性奴隷の証だ。大方さっきの勇者の慰め者だろうぜ』
ーーなにっ!?性奴隷!?
原住民たちとともに俺も自分の足を見る。素足の足首には黄色の線が入った鉄輪が確かにはまっていた。
『くそっ、勇者はあっちだ!』
一斉に移動していく原住民たち。
わけが分からず佇んでいた俺は、突然腕を引っ張られる。
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