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「アキホ、あんた日曜なのに、なんで家でゴロゴロしてるのよ。暇ならトーマくんと存分にイチャイチャして、姉にエロ話を報告しなさいよ!」
「・・・っ!」
俺はイライラしながら、ソファーの上で身体の向きを変え、うるさい腐れ姉を無視する。
「ねぇ~あんたたち最近どんな体位で燃えたの?教えなさいよ。飯のタネが足りないのっ!インスパイアしなさいよぉ」
「・・・うるせー・・・うっ!」
背中にまたがって乗り上がってきた女は、間違いなく40歳目前の女だ。
10代から男同士のバラ世界に血道を上げ、ツワモノとなって約30年。
一時は、当麻と俺を理解してくれるラッキーな肉親というカテゴリーだったが、俺達をネタにイラストや漫画や小説を作っていたという、恐ろしいジツブツを目にしてからは、関わらないのが1番!と俺は貝になっていた。
ーーフツウ、恥ずかしげもなく太ももさらして、弟に乗っかったうえに、容赦なく胸で押し潰すかっ!?
「そうだ!今からトーマくん呼んで、休日エッチしたら?私は外出したことにして、あんたの部屋の押し入れで、あんたとトーマくんのエッチ顔、こっそり描くことにするから」
「するかっ・・・・・・腐れ女」
トーマトーマと名前を出されて、失恋したての俺は地味に傷つく。
「嫌だって言うの?
父さん母さんが死んでから、誰があんたを育ててこのウチのローン返したか分かってんの!?
あんたに拒否権はないんだからっ」
「またそれかよ・・・いい加減にしてくれ」
「なによっ!わっ、アキホ」
俺は無理矢理姉貴を振り落として部屋に戻ることにする。
思春期からの、当麻との思い出が山ほどありすぎる部屋だが、姉貴の猛攻には致し方ない。さっさと逃げるに限る。
だがそれでたやすく諦めてくれる腐れ雌豹ではない。がっしり腕を捕まれて、俺は苛立ちMAXだ。
「ちょっと、アキホっ!」
「トーマとは別れた。二度と会わねぇ!・・・結婚するんだってよっ」
吐き捨てるようにいえば、姉貴の心底驚いた顔が、胸の傷をさらにえぐる。
「え!?ーー・・・あんた」
「そういうわけだから、ほっとけよっ!」
大丈夫なの?と言いたそうな姉貴の顔を見たくなくて、俺は高校生のように、狭い階段を駆け上がって自分の部屋に逃げ込んだ。
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