プロローグ

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…やっと、君を手に入れたと思っていた。 手に入れられた、と勘違いしていた。 君は俺の手をすり抜けて、消えていってしまった。 君に明確な答えを言い、返してもらうべきだった。 身体だけでも先に手に入れよう、などと浅ましい考えをしなければ良かった。 …3年前のことを、今更後悔しても遅いのだろう。 まだ、俺は君をあの店で待っている。 俺の手元に残ったのはメモ帳の切り端だけだった。 何度も見返し、ボロボロになったそれを指で優しくなぞる。 …あの日、君を見失ったあの日。 あの日の朝の大きな雨音が、今も頭から離れずに響いている──。
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