雨音で君を見失った朝

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少しだけ震えた文字と、手紙に付いている斑点が3つ。 話したいと思ってくれていたことは嬉しいのに、「さようなら。」の文字の意味を理解したくないと心が拒んでいて何も考えられない。 …思った通りだったんだ。 彼はきっともう、あの店には来ない。 最後に書かれていた澪斗という名前に、彼の決意を知る。 彼は俺に本当の名前を隠していた。 これは、間違えて書いたのだろう。 彼は俺に会わないと決めていたのだ。 名前を知れて、嬉しいのに悲しい。 …レン、と呼んだ時の顔の意味をやっと理解する事が出来た。 …右上がりな彼の文字の震えと、落ちた斑点に胸が締め付けられた。 その斑点を落とした彼の気持ちも、もう確認することは出来ない──。 パタリと音を立てて落ちた新しい斑点は俺の涙か、それとも雨の雫なのか。 本当はわかっていて…知らないフリを決め込んだ。 きっと、自分が惨めになるだけだ。 服の袖で顔を荒っぽく拭って、もう一度空を見上げた。 …今の俺の心情には全く似合わない、綺麗な澄み切った青。 その空に向かって小さく、だけどハッキリとその名前を呟く。 「────澪斗。」 少し震えた自分の声に失笑してから、立ち上がってゆっくりと歩き出した──。
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