淀み

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「えぇ、何とか....。 取り敢えず怪我人はいないみたいだけど?」 優歌が俺の問い掛けに答えた。 置き時計等、一部の物は落ちて硝子面が壊れてしまってはいるが、どうやら皆、無事らしい。 俺は状況を確認するべく、スマートフォンを確認する。 これだけ大きく揺れたのだから、地震速報の一つもある筈ーー。 俺はそんな思いから俺はズボンのポケットからスマートフォンを取り出した。 皆も同じ気持ちだったのか、即座に自分の携帯電話の画面を見据える。 しかしーー。 (うん....妙だな? あれだけ大きな揺れだったのに、地震速報が表示されてないぞ?) 「あれっ、おかしいな? 地震速報の表示がないぞ??」 俺の心の声を代弁するかの如く、周囲から、そんな声が上がった。 (うん、どうなっているんだ? まさか、家が勝手に揺れたとでもいうのか?) あり得ない事だった。 いや、確かにAI搭載型の家ならば、そんな事が出来る可能性があるが、しかし、こんな揺れを生じさせる意味など果たしてあるのだろうか? ストレスを軽減効果を掲げる、この家のコンセプトを考えたら、何のメリットもない。 ならば何故ーー? 俺の脳裏に良からぬ考えが過る。 家が意思を持っているのではーー。 そんなB級ホラーのような、想像が思わず俺の脳裏を埋め尽くす。 「地震速報も無いなんて、奇妙だな....アクシデントとかで遅れているのか?」 俺がそんな疑問に頭を悩ませる中、俺以外の者からも、そんな疑問の声が上がり始める。 そして、困惑した空気が満ちる中、不意に優歌が口を開く。 「外を確認してみませんか?」 「そうだな、確認してみた方が良いかも知れないな?」 元川さんが優歌の言葉に頷く。 そして、元川さんの同意により俺達は別の案を考える間も無く、外の様子を窺う事にした。 取り敢えず手当たり次第、皆で手分けして聞いて回ることにしたのだがーー。 「地震ねぇ......そんなものなかったけどねぇ? 夢でも見たんじゃないのかい?」 奇妙なことだが、何処に行っても、そんな意見ばかりが飛び交う。 (一体、何がどうなっているんだ?) 得体の知れない状況に、俺は思わず首を傾げる。 だが、それ故にどうしても、ある疑惑が俺の脳裏にこびりついて離れない。 曰く付きの家である疑惑ーー。 しかし、そうなるとある疑問が浮上する。 その疑問とはたかだか中小企業如きが、ネットにアップされ拡散した噂の類いを、全て揉み消せるかという、必然的な疑問だった。 つまり、大企業でもない限り、一度拡散した悪評をどうにかする術はないということである。
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