淀み

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暗がりに水の音ーー。 しかし、それは水ではない。 鉄臭い空気が漂う空間ーー。 狭い空間にただ一人ーー。 一体、何時からだろうか....? 分からない....。 分かる事はといえば、限られた僅かな事のみーー。 耐え難い渇きと、未だに朧気に宙をさ迷う意識ーー。 ただ、それだけーー。 ーーーーーー (やれやれ....まさか、こんな事になるとはーー?) 充彦は何とか笑顔を作りながらも、内心では落胆していた。 本来なら同僚の三葉優歌【みつは・ゆうか】と二人で過ごす予定だったゴールデンウィーク。 だが、実際は....。 「おい、本当にいい部屋だな松橋?」 お邪魔虫の一人である同僚の川崎歩【かわさき・あゆむ】が俺へと問いかける。 「本当、こんなの三十万とか嘘みたいな話しよね?」 同じくお邪魔虫の佐藤環【さとう・たまき】が感心した口調で言う。 全く....何故、こんな事になってしまったのだろうか? いや、必然といえば必然か。 大体、今まで様々な情報が同期入社のメンバーで共有されてきたのだ。 ならば、今回だけ情報共有がされないって状況がある訳もある筈もない。 (良く考えれば、なるべくしてなったという訳か....。 我ながら認識が甘かったなーー。) 俺は自らの迂闊さに、思わず苦笑する。 だが、その直後だった。 ピコリーン。 そんなユニークな呼び鈴が、新たなる来客の訪れを知らせる。 (うん? 一体、誰だ?) 俺は首を傾げながら、玄関へと向かう。 そして俺は、予想すらしていなかった来訪者とーーいや、来訪者達と遭遇する。 「よう家、買ったんだってな、松橋?」 「本当に凄いわね。 高かったでしょう松橋くん?」 「いえ、そんな事ないですよーー。 それはそうと何で、元川さんと野原さんが家を知ってるんですか?」 当然過ぎる疑問だった。 何故、ガキ大将が大人になったような人こと、元川竜人【もとかわ・たつひと】先輩と、ややインテリ体質の野原花日【のはら・はなび】先輩がここに居るのか。 正直、それなりに予想もつくが、それでも一応は聞いておかないと、受け入れる事すら出来かねるというものである。 そして案の定、先輩二人から予想通りの言葉が飛び出す。
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