2ndシングル

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「それは、瀬戸先輩のことを言ってるのか?」 「……平凡の名前なんて取るに足らないことはどうでもいい。それよりも、あの三人から引き離せるような情報を仕入れてほしい。そうすれば、俺がそれを元にどうとでも出来る」 「俺に、先輩を売れって?」 「売る? そんな言い方はよしてくれ。キミはただ、俺に、小耳に挟んだ噂話を伝えてくれるだけでいい。できるだけ真実に基づいた噂話を。そうすれば、俺はその噂を俺なりに解釈して話のタネにできる」 今、コイツから視線を逸らすのは負けだと思う。だから、俺は精一杯睨み返した。芸術品みたいに整った顔に光る、何の光も灯していない双眸を。 「仲よくしようじゃないか、春日くん。キミの名前を覚えるのも俺にとっては一苦労だったんだから」 コイツ、ヒトとして大事な部分が明らかに欠陥してる。これでも世の女の子は換気の悲鳴を上げ続けるのかよ。 愕然としている俺がマズかった。近づいてくる羽柴の動きに反応するのが遅れて、一瞬のうちにヤツの手が俺の首に伸びていた。 「ぐう、う……」 「いいから、言われたとおりにやれよ。お前と俺はステージが違うんだ。ステージが違う以上、お前は俺のいいなりにしかなれないんだよ」 信じられない力で俺の首を握ってくる。すごく苦しいし、外そうともがいているはずなのに全く動かない。それ以上に俺を見下すような瞳が、俺に恐怖を刻み付けた。
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