2ndシングル

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流石に平井に話してもいいと思えるのはここまでで。瀬戸先輩を引き離すって内容まで話すと何をされるか分からないし――と俺は口を噤んだ。 「なんか、まだ隠してそうだけど……ホントにやばくなったら言えよ? お前一人で抱え込んでもしょうがないってこともあるからな」 「お前、良いヤツだな」 「お前の見る目が良かったんだよ」 なんだコイツ、かっけえじゃん。 小さな声でヒソヒソと、周囲のざわめきに飲み込まれるように話していたはずなのに、聞こえているんじゃないかと胸がざわつく。なんでこんな気持ちにならないといけないのか……考えるはやめにしよう、苛立ちが募りすぎる。 ◇ 複雑な心境のまま講義は終わり、そのまま平井と別れた俺は春から始めた一人暮らし用のアパートに帰ってきた。クシャクシャにしていた紙切れ――羽柴の連絡先を登録して、『春日』とだけ送信した。思いの外すぐに『これからよろしく』と返信が来て、思わず舌打ちが漏れる。 「さて……どうするか」 呟きは殺風景な部屋の壁紙に溶けて消えた。 ベッドにごろりと横になりながら考える。そもそも羽柴のことはキライになったし、このまま言いなりになるのも癪に障る。しかも瀬戸先輩は優しくて頼りがいのある先輩だし、あんな奴の思い通りになって先輩が傷つくのもすごくイヤだ。
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