3rdシングル

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講義が終わって人の波に乗りながらエントラスへと出てきた。 「あ、先輩たち」 ちょうど正面玄関から瀬戸先輩と白川先輩が入ってきたところで、新入生の波に驚いたのか、瀬戸先輩はおっかなびっくりした表情でいる。その後ろでなぜかリュックを二つ持っている白川先輩は、もしかしなくても荷物持ちになっているのかな。 避難する様に壁際で立ち止まった先輩たちに近付くと、気付いたみたいで手を振ってくれる。自分でも分かりやすいと思うけど、俺は瀬戸先輩にメッチャなついてるな。 「おはようございます」 「はよ、小魚の群れみたいな感じだったな。今の映像に価値はねえけど」 微妙な毒を吐きながら、平井にも「よっ」と声を掛けている。気遣いというかなんというか、ありがたい人だよなあ。 「ちょっと、アレだ。ベンチ行こうぜ、座らせてくれ」 「え、どこか痛いんですか?」 「ちっと腰が痛くてな……寝違えたみたいなもんなんだけどよ」 「そっか、今日は白川先輩ん家でしたもんね。自宅の方が寝やすかったりしますし」 「そんな感じ」 どうりで白川先輩が荷物を持って、しかもちょっと嬉しそうなわけだ……なんで嬉しそう? 弱った先輩、めったに見られないから? いやそんな性格悪くないか。
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