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「……ま、いっか」
俺の呟きは確かに聞こえたはずなのに、平井は特に反応を見せなかった。ただ、小さく頷いたように俺には見えた。
上手く言えないけど、なんだかいいものを見ていたような気がして感傷めいたものに浸っていると、おどろおどろしい音が俺のポケットから。まるで頭が痛くなったような感覚にこめかみを抑えると、音に驚いた平井が周囲を見渡している。
「ごめん平井。今の音、俺の携帯」
「……マジか。呪いでもかかったみたいだったけど」
「問題です。誰からの着信でしょう。ちなみに、今の受信音は昨日の夜設定しました」
「――羽柴じゃねえか」
食い気味の正答ありがとうございます。
イヤな予感がビシビシするけど、無視するわけにもいかず文面に眼を通す。どうやら先ほどの先輩たちとのやり取りをどこかからか見ていたようで、『何かある?』とのこと。詳しい内容がないのは、やはり痕跡を残さない為だろうか、さすが。
「情報収集?」
「ん、そんな感じ。とりあえず、瀬戸先輩から許可はもらってるし、アイツの喜びそうなガセネタを掴ませとく」
「ふうん、どんな?」
「んー……白川先輩のことを顎で使ってる、みたいな」
「事実じゃね?」
まあ、そうなんだけど。知らない人が聞けば瀬戸先輩のイメージダウンになるし、羽柴の目的はそれだろうし。
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