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それでも、私はこの家族の一員として迎えられて良かったと思う。大げさなほど感情豊かな養父の光太郎、口うるさいけど優しい養母の亜希、二つ上の光希はたよりになる義兄で、養父の両親も穏やかで良い人たちだった。養母は病気で、義祖父母は事故で他界してしまったけど、それまでもそれからも、養子だからと虐げられたり光希と差別されたことなど一度もない。
「森沢の本家では昔から、第一子が双子だった場合、片方は分家に出すことになっていたらしい。有希乃と橙子ちゃんが生まれる時、そんな時代錯誤なしきたりなんてって俺たちの世代は反対したんだけど、前当主の祖父や他の分家のじいさんたちに押し切られて。姉の橙子ちゃんは後継ぎとして残され、妹の有希乃はうちの子になったんだ」
養父はわかりやすいようにゆっくり話してくれた。
「本人たちには成人するまで隠すっていうのもしきたりで、橙子ちゃんも有希乃の存在を知らない。だから、本家には光希しか連れて行けなかった。逆に、うちで葬式があった時も、橙子ちゃんは来られなかった」
衝撃がないと言ったら嘘になる。だけど、どこか冷めた自分がいることも確かだった。
「成人したら話すつもりだったけど、内緒にし続けて本当にすまん! おまえが小六の時に亜希が死んで、中二でじいちゃんばあちゃんも死んで、三人きりの家族になったし、よっぽど話して聞かそうと思ったんだがな……言い出せなかった」
養父は沈痛な面持ちでそう言うと、私に向かって頭を下げた。
「謝らないでよ。お母さんの時もじいちゃんばあちゃんの時も、それどころじゃなかったの、ちゃんとわかってるから」
養母が倒れてからの養父の憔悴ぶりは、見ている方が辛くなるほどだった。亡くなる直前まで養父を励ましすように笑顔でいた養母を思い出すと、私も正直、泣きたくなる。養母の死を家族みんなで支え合って乗り越えようとしていたのに、今度は義祖父母が事故に巻き込まれて他界したのだ。どれほどポジティブな性格でも、そんな悲劇に見舞われたら立ち直るのは大変なことだろう。
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