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垂れた目尻の延長線上にシワがクシャッと寄って…意外と可愛い…。
なんて、ちょっと笑顔見たくらいでドキッとするなんて我ながら単純過ぎる。
しかも相手は社長の男(かもしれない人)だ。
それに私は浮気・不倫する男は絶対無理。
そんな風に、ときめきそうになった自分を心の中で諌めていた時だった。
「唯人ぉー?今日の産婦人科の検診って何時からだったっけー?」
秘書室の奥の扉から、うちの会社の社長 橘利加子が現れた。
彼女は四年前40歳の若さで、ユニフォームや制服などの企画からその物流まで手がけるうちの会社『株式会社アクティブ』の代表取締役に抜擢され、その後も会社の業績を伸ばし続けている超ヤリ手の社長だ。
普段あまり見かけないけど、会社の行事のときは自社の特注スーツにハイヒールでキメているイメージしかない。
そんな彼女が、今日はゆったりとしたマキシ丈ワンピースにフラットシューズを身に付けていて、まるで別人のように見えた。
そして、驚いた顔をした私の存在に気づいた社長も明らかに動揺し、微妙過ぎる空気が流れる。
もしかして…と言うより、見るからに社長、妊娠してる…?
しかも課長のこと「唯人」って呼んでるってことは、やっぱり二人は特別な関係で、お腹の子供の父親は……やっぱり課長?
異動数分でとんでもないものを目の当たりにしてしまい、今すぐ総務部に逃げ帰りたい衝動に駆られた。
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