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社長の背中を見送る課長の顔をチラリと盗み見る。
心配そうな、それでいて慈しむような眼差しが、課長の想いを語っているように見えた。
無関係の私が見ても分かるくらいに。
もうこの時点でほとんど確信していた。
課長と社長のただならぬ関係。
このまま秘書課での仕事を始めたら、二人の不倫の片棒を担がされてしまうかもしれない。
だけど、私はどうしてもそれだけはできない。
真相を確認するために退職も辞さない覚悟で、震える唇を動かした。
「嘘…ですよね?」
「…何が?」
「あの、社内で流れている…噂」
「噂?」
「しゃ、社長と課長が特別なかん、けいっていう噂…」
激しい動悸に言葉の切れ目じゃないところで喉が鳴って、可笑しくもないのにい語尾に「ハハハッ」と乾いた笑いを付け足してしまった。
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